HIV感染症と診断されたら

2021.06.01 医療情報

HIV感染症と診断されたら

当院は感染症専門医が多数在籍する感染症内科です。HIVの検査だけでなく、治療も行っております。


HIV感染症と診断される状況は多岐にわたります。

「不安な性行為があったので、心配だから検査に行った」、「熱や湿疹が続いたので病院に行った」、「手術の前の血液検査でたまたまみつかった」、「クラミジアと診断されたときにHIVの検査も勧められた」など人様々です。

「あなたはHIV感染症です」と病名を告知されたときに、ご自身の中で想定していたことだったのか、意外なことであったのか、まったく頭になかったのか、でその時の受け入れ方が全く違ってくると思います。

その時にどんな状況下であっても、知っといてほしいことがいくつかあります。

告知されたあとに、何を説明されても頭に入ってこないと思います。これまでの診療経験を踏まえ、告知をする際に必ずお話しすること、知っておいてほしいことをまとめておきたいと思います。

①HIV感染症は「命を落としてしまう」病気ではなくなってきている

 

過去の知識がアップデートされていないと、「HIVにかかってしまうと数年で死んでしまう」とか、「しばらくは生きられるけど発症したら終わり」などと思っている方もいらっしゃいます。

これらはまったくの間違いで、古い情報です。

今のHIV感染症の考え方は、「慢性疾患」といってもいいくらいで、高血圧症や高脂血症などと同じと考えていただいてもよい、といっても過言ではないと思います。

例えば、30歳でHIV感染症が判明したとします。そうすると平均何歳くらいまで生きられるでしょうか?答えは、「感染していない30歳と同じ寿命まで」です。HIV感染症が死亡年齢に関係しない、ということです。このことはいくつかの研究で明らかになっており、その大きな理由は「薬の進化」によるものが非常に大きいです。
以上のことから、HIV感染症はこれまでと同じ通りの生活を送ることができる病気になってきており、決してこれからの人生を悲観することはありません。

②必ず定期的に医療機関を受診し、薬を忘れずに毎日内服する

 

①を達成するにはいくつかの条件があります。それは、

  1. 診断されたらすぐに然るべき医療機関へ受診する
  2. 定期的に医療機関を受診し検査を受ける
  3. 薬がはじまったら、忘れないように必ず毎日内服をする

これらを守ることができれば、これまでと同じ生活を送ることができます。

 

1.診断されたらすぐに然るべき医療機関へ受診する

 

まず「然るべき医療機関」とはどこでしょうか?それは「HIV拠点病院」といわれる病院・クリニックです。

https://hiv-hospital.jp/

こちらのサイトから探すことができます。もちろんKARADA内科クリニックも拠点病院であり、多くのHIV感染症の方が通院されています。

HIVの検査をしていても、治療まで行っているクリニックは実は非常に少ないのが実情です。

大きい病院や大学病院だと、どうしても受診時間などに制限がでてきます。

クリニックであれば開院時間も長く、土日も診療しているところもありますので、HIV感染症のかかりつけとして考えてみてはいかがでしょうか?

<1回目の受診で行うこと>

この拠点病院を受診して行うことは、問診、診察、採血です。

今症状があるのかないのか、診察上問題はあるのかないのか、を見させていただき、その後採血を行います。採血で主に見る項目は、「CD4(シーディーフォー)」と「ウイルス量」です。HIV感染症は治療をせずに放置しておくと、免疫が下がり、普段ならかからないような感染症にかかりやすくなってしまう病気です。

CD4とは、「今自分がどれくらい免疫があるか」をみる指標で、この数値が高ければ高いほど免疫が保たれている、低いと免疫が下がっている、ということになります。

「ウイルス量」は、血液中にどれくらいのHIVがただよっているか、という指標です。これが高いとそれだけ人へ感染させやすいですし、低ければそのリスクも下がるというわけです。この2つの指標は、だいたい結果がでるまでに1週間かかりますので、その日にわかることはありません。
薬を飲む目的は、「CD4を上げて免疫を保ち、ウイルス量を下げて検査しても見つからないくらいにする」ということになります。

もしもこの時に高熱や咳が続いていたり、体重減少が顕著であったりした場合には、エイズを発症している可能性もありますので、場合によっては入院となってしまうこともあります。

<2回目の受診で行うこと>

2回目の受診は、1回目の受診で行った採血結果がでる1週間後になります(状況によっては1か月後となることもあります)。採血結果次第では、他の感染症にかからないようにするために抗生物質の予防投与が始まることもあります(目安はCD4が200未満もしくは50未満)。特に問題がなければこの日は採血などの検査はありません。

<3回目の受診で行うこと>

1回目の採血から1か月の間隔をあけて、2回目の採血を行います。

<4回目の受診で行うこと>

2回目の採血結果がでる1週間後に再診をします。この2回の血液検査結果をもとに、身体障害者手帳の申請を行います。居住地の市区町村役場に必要書類(申請書、医師の診断書、写真等)を提出し、おおよそ1~2か月後に申請が通ります。詳細は下記ホームページをご参照ください。
https://www.haart-support.jp/manual/c04_05.html

<5回目以降の受診で行うこと>

申請が通れば、更生医療などを利用し、受診にかかる費用(検査費、薬代など)を一定の自己負担額で医療を受けることができるようになります。

個人の収入により自己負担額は変わってきますが、月0円~2万円程度です。

ここまで来るのにだいたい1回目の受診から2~3か月程度を要します。

つまり、抗HIV薬を始めるのには、感染が判明してから2~3か月後ということになります。エイズを発症してしまっていた場合には、この通りではなく、すぐに治療を開始することもあります。

2.定期的に医療機関を受診し検査を受ける

薬がはじまったら、最初のうちは1か月に1回の受診をしていただき、副作用がでていないか、異常はないかなどを聞き取りをし、毎回採血を行います。採血結果は次回の受診時にお伝えをしていきます。薬がはじまってから、どれくらいCD4が上がったのか、ウイルス量はしっかり減ったのか、を確認していくことが重要です。また薬を切らさないように最大限の注意を払う必要があります。

3.薬がはじまったら、忘れないように必ず毎日内服をする

薬を忘れないように、必ず毎日飲み続けないといけない理由は、「薬が効かないウイルスになってしまう」ことを防ぐためです。薬を飲むことを忘れてしまう回数が増えれば増えるほど、その薬が効かなくなってしまうリスクが上がります。抗HIV薬は、種類がそんなにたくさんあるわけではなく、1つの薬が効かなくなってしまった(耐性化してしまった)場合、最悪治療薬がなくなってしまうこともあります。寿命を全うするためには、このような理由から、毎日忘れずに薬を飲み続けることが重要なのです。

③病気自体のことだけでなく、社会的な活動についても相談できる相手がいる
「仕事をやめないといけないのか?」、「誰に相談すべきか?」など病気のこと以外でいろいろと悩むことが出てくると思います。医師だけではなく、ソーシャルワーカーや支援団体など、相談できる相手はたくさんいます。「誰にも相談できない」と思わず、まずは医師に相談し、医師に解決できない問題はどこに相談をしたらいいか、聞いてみてください。

少し詳しく書いてきましたが、3つのポイントだけは忘れないように覚えておいてください。

①HIV感染症は「命を落としてしまう」病気ではなくなってきている

②必ず定期的に医療機関を受診し、薬を忘れずに毎日内服する

③病気自体のことだけでなく、社会的な活動についても相談できる相手がいる


KARADA内科クリニックは平日19時まで診療をしており、土日も診療可能です。

渋谷院は渋谷スクランブル交差点目の前(JRハチ公口徒歩2分)、五反田院はJR五反田駅徒歩1分、品川駅・大崎駅からもアクセス両行です。

記事執筆者

KARADA内科クリニック 五反田

院長 佐藤 昭裕

KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医。

総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。性感染症(性病検査)も専門とする。
「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。

東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。
-著書『感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル』
●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演中 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

認定資格

  • 医学博士
  • 日本感染症学会専門医・指導医
  • 日本内科学会認定医
  • 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
  • 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
  • 日本エイズ学会認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 臨床研修指導医(厚生労働省)
  • 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)

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