- 医学博士
- 日本感染症学会専門医・指導医
- 日本内科学会認定医
- 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
- 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
- 日本エイズ学会認定医
- 日本医師会認定産業医
- 臨床研修指導医(厚生労働省)
- 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界で猛威をふるう中、日本国内の感染もじわじわと拡がってきています。
感染経路は飛沫感染と接触感染とされており、「手を洗いましょう」、「せきがある時はマスクをしましょう」とその予防法が各所で言われています。
さて、「セックス(性行為)」についてはどうでしょうか。
「そりゃうつっちゃうでしょ、コロナ」と思う方もいれば、「行為によっては大丈夫なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
間違いなく言えるのは、「初めて会ったような、素性のわからない人との性行為は控える」ということだと思います。
まず、セックス中に起こる感染経路は、「経口感染」、「糞口感染」、「血液感染」の3種類です。
ここで、「あれ?飛沫感染とか接触感染はないの?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。そもそも飛沫感染や接触感染は、病院内での感染経路をあらわしています。今回のコロナの事例でも、その表現が多用されています。
しかし、一般の生活の中では、実は「経口感染」、「糞口感染」、「血液感染」といったもののほうが身近かもしれません。
まず経口感染ですが、これは上記の飛沫感染と接触感染も含まれた表現といってもいいかもしれません。自分の口から細菌やウイルスが入ってきて感染してしまうという感染経路です。この経路をたどってしまう行為は、キス、クンニリングス、フェラチオなどになります。
糞口感染は、読んで字のごとく、便が口の中に入ることにより、便の中に入っていたウイルスや細菌が体内に入ることをいいます。この経路をたどってしまう行為は、リミング(アナルをなめる)で主に起こってしまいます。
血液感染は、血液を介して感染してしまう経路ですが、何も血液だけではなく、精液の交換でも感染してしまいます。HIV感染症はこの経路です。この経路をたどってしまう行為は、セックス、アナルセックスなどになります。
さて、「新型コロナウイルスはセックスでうつるのか?」という疑問の一つの参考となりそうな論文がでてきました。
”Clinical features and sexual transmission potential of SARS-CoV-2 infected female patients: a descriptive study in Wuhan, China”
上記の論文で、武漢で新型コロナウイルスに感染し、重症化した女性35例について研究したものです。
その結果、「42.9%で相手に感染させていた」ということです。腟と肛門のPCR検査も行ったところ、肛門から1例のみコロナウイルスの検出があったとのことです。腟からはウイルスの検出がありませんでした。
このことから、女性から男性に性行為で感染させる、という証拠はみつからなかったものの、「濃厚接触であるセックス」では、パートナーに感染させる確率は今のところ42.9%、という結論です。
今のところ、どの経路で感染を起こすかは確定はできていませんが、上記の論文からも経口感染(飛沫感染含む)であることは確率が高そうです。どの経路を考えても、濃厚接触にあたると思いますので、体調がすぐれない時、微熱がある時、咳がある時、などはこの時期は性行為を控えるのが良いと思います。
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