- 医学博士
- 日本感染症学会専門医・指導医
- 日本内科学会認定医
- 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
- 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
- 日本エイズ学会認定医
- 日本医師会認定産業医
- 臨床研修指導医(厚生労働省)
- 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
KARADA内科クリニック総院長の佐藤です。こちらでは感染症専門医としてサル痘を解説いたします。
昨年からニュースでも耳にするようになった「サル痘」ですが、今年に入り日本国内でも増加がみられ、特に首都圏で多く発生しています。
サル痘は英語でMonkeypoxと呼ばれていましたが、差別・偏見を助長する可能性があることから今では”Mpox”という名称に変更されました。そのため国内でも「エムポックス」と呼ばれだしており、今後厚生労働省も変更予定ですが、現段階ではまだサル痘と記載があるため、ここではサル痘と書かせていただきます。
2022年5月から世界では流行が始まり、これまで約86,000例の報告があり、約100名の方が亡くなっています。世界的には流行がおさまってきているのですが、日本国内では増加傾向となっています。東京・神奈川・千葉などの首都圏での増加しており、3月14日にはまとめて14例の報告があがりました。
これで国内では45例となりましたが、死者は今のところ報告されておらず、ほとんどが軽症とのことです。国内では4類感染症に分類されています。
これまでの報告から、症状として多いものは下記の通りです。
皮疹(95%)・発熱(62%)・リンパ節の腫れ(56%)・疲労感(41%)・筋肉痛(31%)・咽頭炎(21%)・頭痛(21%)・直腸炎/肛門の痛み(14%)・気分の落ち込み(10%)
皮疹がでる場所として、肛門や生殖器の頻度が73%最も多く、体幹・四肢、顔、手のひら・足の裏と続きます。皮疹の特徴としては水疱(小さい水ぶくれのようなもの)ができます(写真参照)。
またリンパ節の腫れについては、首の横から後ろにある後頚部リンパ節が腫れることが多いとされています。多くの場合2-4週間程度で自然に軽快します。 感染経路としては、上記の水疱などの皮膚病変に触れることで感染する接触感染と、飛沫などをあびて感染する飛沫感染があります。これまでの報告では、患者の98%が男性であり、年齢の中央値は38歳でした。
性行為を通じて感染したと思われる事例がほとんどですが、性行為を介さない皮膚との接触で感染した事例も報告されています。 検査法ですが、一般のクリニック・病院で検査を行うことはできません。診察した医師が、「サル痘の可能性がある」と判断した場合、所管の保健所に相談を行い、さらに東京都と連携し「検査が必要である」と判断された方のみ、検査を行うことになります。
誰でも検査を受けられるということではありません。さらにその検査を行うために、指定の病院へ紹介されることもあります。
行う検査の内容としては、血液検査、尿検査、鼻咽頭ぬぐい液採取、皮疹がある場合にはそこのぬぐい液採取などになります。
もし当院へ「サル痘かも?」と思って受診をご希望される場合は、お電話でご一報いただくか、Web予約の際にその旨記載をお願いいたします。
予防についてですが、天然痘ワクチンがサル痘にも有効とされ、世界ではリスクの高い層への接種がはじまっていますが、日本では一般の方はまだ接種ができません。感染経路を踏まえると、性行為からの感染がほとんどですので、不特定多数との性行為、特に水ぶくれなどがみられた方との性行為は避けるようにしましょう。
また治療薬についてもアメリカやイギリスなどではシドフォビル、Tecovirimat、Brincidofovirなど天然痘に対する治療薬が承認されていますが、日本ではこれらの治療薬は現時点では未承認で、国立国際医療研究センターでは一部の薬で治験が行われています。 国内で増加傾向にあるサル痘。正しい知識をもって、適切な感染対策を心がけてください。
N Engl J Med 2022; 387:679-691 DOI: 10.1056/NEJMoa2207323
厚生労働省
国立国際医療研究センター病院
CDC