新しい性感染症予防「Doxy PEP(ドキシ ペップ)」について

公開:2023.10.05 /
更新:2024.09.05
医療情報

新しい性感染症予防「Doxy PEP(ドキシ ペップ)」について

KARADA内科クリニック総院長の佐藤昭裕です。

2023年10月2日、アメリカのCDC(疾病対策予防センター)は、”Public Comment Period for Doxy PEP Guidelines”という文書を発表しました。「Doxy PEP(ドキシ ペップ)」という新しい性病予防の方法について、ガイドラインを制定し、それに対し専門家の意見を求めるというものです。

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ドキシペップの料金や処方法など

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ドキシペップとはどんな予防法?

このドキシペップという予防法は、性行為後72時間以内にドキシサイクリン(商品名:ビブラマイシン)という抗菌薬を200mg内服することにより、梅毒、淋菌、クラミジアを予防するというものです。

どれくらい予防できるのか?

もう少し詳しく説明すると、①PrEP(プレップ)を内服しているMSM(男性と性行為のある男性)、②トランスジェンダー女性、③HIV感染者の中で、過去1年間にSTI(性感染症)にかかった人を対象に、コンドームを使用しない性行為があった後72時間以内にドキシサイクリン200mgを服用する群(曝露後予防群)と、ドキシサイクリンを服用しない標準治療を受ける群に分け、性感染症の発生割合を比較しました。

その結果、①②の群では性感染症発生率が曝露後予防群は10.7%、標準治療群は31.9%、③の群では性感染症発生率が曝露後予防群は11.8%、標準治療群は30.5%という結果でした。つまりおよそ1/3程度に性感染症を予防できる可能性があるということです。

この背景は、アメリカでは梅毒、淋菌、クラミジアなどの性病が急増しており、この問題を解決するための新しい予防法が提唱されたということです。日本でも同じようにこれらの性病は増加しており、日本にも必要な対策になると考えます。

ドキシペップで懸念される事

一方で懸念される問題もいくつかあります。そのうちの一つが、「抗菌薬が効かない耐性菌が出現する」可能性です。もう一つが、今回の試験ではHIV曝露前予防であるPrEP(プレップ)をすでに利用している人や、HIV感染者が対象で「性病検査を定期的に受けている人」が対象でしたが、このグループに属さない人たちに適応した際に、予防失敗を見逃してしまうのではないかということです。このあたりの問題について現在専門家の意見を集約し、どのようにガイドラインに落とし込むかの作業を行っている段階です。

当院ではまだこのドキシペップは提供しておりません。ただ、このガイドラインの作成状況を見守りながら、今後の提供に向けて準備を進めようとしております。引き続き最新のエビデンスをアップデートしながら、安全な医療を皆様にご提供したいと考えております。

参考文献

CDC https://www.cdc.gov/std/dstdp/dcl/2023-october-2-doxy-pep-guidelines.htm
NEJM https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2211934

記事執筆者

KARADA内科クリニック 五反田

院長 佐藤 昭裕

KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医。

総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。性感染症(性病検査)も専門とする。
「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。

東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。
-著書『感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル』
●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演中 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

認定資格

  • 医学博士
  • 日本感染症学会専門医・指導医
  • 日本内科学会認定医
  • 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
  • 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
  • 日本エイズ学会認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 臨床研修指導医(厚生労働省)
  • 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)

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