性病はセックスやオーラルセックスなど、特定の行為によって引き起こされる感染症です。性病という名前から、その症状が現れるのはペニスや膣などの性器、という風に連想されがちですが、そうではありません。 HIV感染症やB型肝炎などは、性器には特に異常がなく、「性器とは関係のない臓器」に感染し症状を引き起こします。このことが性病検査や治療で医師を困らせる原因となっています。性病にかかってしまったときは、「誰にも知られたくない」「ひっそり検査をしたい」「ばれないように治療したい」など様々な思いがあると思います。しかし、何より重要なのは、正確な診断をつけ、正しい治療を受け、しっかり治ったか判定することだと思います。
しかし、それでは性病と同時に人類も滅んでしまいます。性病の原因となるウイルスや細菌などの微生物は、人類と同じように進化をしていきます。ヒトという微生物にとって住み心地のいい宿を探し、子孫を残していくためにその宿を増やしていく必要があります。そのためにはヒトの行動様式を学び、どのようにしたらヒトからヒトへ渡り歩けるようになるかをあらゆる微生物は探しています。 その進化の過程で、あるウイルスはヒトの便の中に潜み、手を介してヒトの口の中に侵入して増えるようになったり、唾や痰の中に潜み、くしゃみや咳を介して侵入するようになったりしました。
このことからも、人類は今後も性病を引き起こす微生物と、上手につきあっていかねばなりません。「上手につきあう」ということは、「セックスのあとに性病のような症状がでたときには、速やかに検査を行い、しっかり治療する」ということだと思います。症状を放置したり、正しい治療を受けられない、ということは、微生物たちの子孫を残してしまう選択になってしまうからです。
性病の「性」は性行為の略だと思います。ひとくちに性行為といっても、時代とともにその内容は多様化しており、
などがあげられます。
また、sexuality(セクシャリティー)によってもその内容は変化するため、多種多様な性行為が行われています。
セックスをすることで、病原微生物を含む体液(精液、膣分泌液、血液、便など)に直接触れるたり、なめたり、粘膜面(膣、尿道、直腸)や傷口が接触することでうつります。
性病にかかっても、自覚症状がない、もしくはほとんどないものが数多くあります。しかし、体の中ではゆっくりと進行し、重症化してしまうものがあります。例えば、クラミジア感染症は男女ともにあまり症状はでませんが、女性が治療をせずにほおっておいてしまうと膣から体の中の方へ感染が拡がり、骨盤内炎、卵管炎、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)という病気に進展しまいます。こうなってしまうと外来で治療を行うのは困難になり、入院での治療が必要になります。
女性では淋菌やクラミジアにより、卵管炎、骨盤内炎、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)を起こしてしまうと不妊症、子宮外妊娠の原因となることがあります。男性では精巣上体炎という状態になった場合に、不妊症の原因となることがあります。
妊娠中に感染してしまうと、先天性の障害、つまり生まれつき障害を持った赤ちゃんが生まれることがあります。障害だけではなく、死産・流産・早産・新生児死亡となってしまうこともあります。
ほとんどの性病は、早めにしっかりと治療をすれば治ります。そのためには早期発見が何より重要です。少しでも性病の症状かな?と思ったら受診するようにしましょう。
また、多くの性病は何回でも感染します。自分自身は検査をして治療したとしても、パートナーがしていなければ、再びパートナーからその性病をもらってしまいます。これをピンポン感染と呼んでいます。ピンポン感染をしないためには、お互いに同時に検査を受けて、治療をする必要があります。
コンドームをつけないセックスやオーラルセックスをすると、性感染症(性病)の原因となるウイルスや細菌などの微生物が、体内に侵入してきます。
その侵入してきた微生物は、血液や粘膜を介して体内をめぐります。その微生物がヒトの体の中で好きな場所にたどり着き、病原性を発揮しだすと、症状として現れてきます。その体内に侵入してから症状が出現するまでの期間を潜伏期間といいます。
その間は症状がでないため、感染していることに気が付きません。性感染症によっては、この時期でもセックスをすると人へうつしてしまうこともあるため、注意が必要になってきます。具体的には、コンドームを使用しないセックスやオーラルセックス等のリスクのある行為をしてしまった時には、性病検査を行い、早期に見つけることが重要です。