子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)について

2020.01.06 医療情報

子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)について

KARADA(カラダ)内科クリニック院長の佐藤です。

本日は子宮頚がんと、
HPVワクチンについて述べたいと思います。

子宮頚がんについて

子宮頚がんは、日本で年間約1万人が発症、
約2,900人が命を落としています。

その罹患者数・死亡者数とも近年増加傾向で、
特に20歳~40歳台の働き盛りの女性や子育て世代の女性で顕著になっています。

HPV(Human Papilloma Virus)について


子宮頚がんの原因、それがHPV、
日本語ではヒトパピローマウイルスといいます。
「がんの原因がウイルス感染症」、ということです。

HPVにはなんと100種類以上の型があり、
発見の順番で番号が付けられています。
HPV1、HPV2、といった具合です。

HPVは子宮頚がん以外にも、
肛門癌、性器癌、頭頚部癌、
尖圭コンジローマの原因になることも知られています。

HPVは性行為で感染し、性交渉の経験がある女性のうち、
約50%~80%は、生涯で一度はHPVの感染機会があると推計されています。

しかしその多くは特に症状はなく、
自然にウイルスは消失してしまうことがほとんどです
(新規 HPV 感染の70%が1年以内に消失し、約 90%が2年以内に消失するといわれています)。

しかし一部で子宮頚部に長期間感染し、
前がん病変を経て、子宮頚がんになってしまうことがあるのです。

HPVのうち、がんになってしまう恐れのある種類を「ハイリスク群」、
尖圭コンジローマなどを引き起こす種類を「ローリスク群」と呼んで区別しています。

ハイリスク群に含まれる型は、
「 16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,69,73,82 型」で、
このうち16,18,45,31,33,52,58,35の8種類で子宮頚がんの90%を占めています。
ローリスク群は、「6,11,42,43,44型」などです。

HPVワクチンについて

ハイリスクグループとローリスクグループの
数種類の感染予防をできるワクチンが、
いわゆる「子宮頚がんワクチン」といわれているものです。

国内で承認されているHPVワクチンは2価と4価の2種類があります。

「価」とは、HPVのうち、何種類の型に効果があるか、
という意味です。

2価ワクチンは子宮頚がんの主な原因となるHPV-16型と18型に対するワクチンです。

一方、4価ワクチンは16型・18型と、
良性の尖形コンジローマの原因となる6型・11型の4つの型に対するワクチンです。

2価もしくは4価のワクチンで子宮頚がんの約60%をカバーできるといわれています。

世界的には、9価のワクチン(ガーダシル9)がうたれており、
このワクチンでは約90%をカバーできるとされており、
HPVの6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の予防が可能です。


当院では下記2種類のワクチンを取り扱っております。


①4価ワクチン(ガーダシル®):16,000円


3回接種が必要です。
初回から数えて、2回目は2か月後、
3回目は半年後にうちます。


②9価ワクチン(Gardasil®9):32,000円

11~14歳は2回接種、15歳以上は3回接種が必要です。
初回から数えて、2回目は2か月後、
3回目は半年後にうちます。

日本におけるHPVワクチンの現状


海外では4価ワクチンではなく、
すでに9価のGardasil9に置き換わっているのですが、
日本では、以前のタイプのワクチン(4価)の副作用で体調が悪くなったと訴えて訴訟が起きており、
その問題が解決していないため新しいワクチンの導入が進んでいません。

なお、現在ではその症状とワクチンの因果関係は、
科学的に否定されています。

日本産婦人科学会なども、
HPVワクチンの正しい理解を広めるため、
ホームぺージで詳細に説明をしています。

 

「がんを予防できるワクチン」は今のところこのHPVワクチンと、
B型肝炎ワクチン(肝臓がん)だけです。

WHOも世界中の最新データを持続的に評価し、
「HPVワクチンの推奨を変更しなければならないような
安全性の問題は見つかっていない」と発表しています。

日本は世界に比べ、明らかにHPVワクチンの接種率が低いです。

「年間約1万人が発症、約2,900人が命を落とす」、
この悲劇は簡単に防ぐことができます。

男性への接種


アメリカやオーストラリアなどでは男性への接種もされています。
「子宮頚がんワクチン」と言われてしまうと違和感があるかもしれませんが、
先ほど述べたとおり、肛門癌、性器癌、頭頚部癌、
尖圭コンジローマ等幅広い病気の予防が可能なため、
当院でも男性への接種を行っています。

HPVワクチン(子宮頚がんワクチン)のことは、KARADA内科クリニックへご相談ください。

記事執筆者

KARADA内科クリニック 五反田

院長 佐藤 昭裕

KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医。

総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。性感染症(性病検査)も専門とする。
「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。

東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。
-著書『感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル』
●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演中 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

認定資格

  • 医学博士
  • 日本感染症学会専門医・指導医
  • 日本内科学会認定医
  • 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
  • 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
  • 日本エイズ学会認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 臨床研修指導医(厚生労働省)
  • 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)

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