HIV予防薬PEPのよくある質問を、感染症専門医が解説

2022.03.04 医療情報

HIV予防薬PEPのよくある質問を、感染症専門医が解説

当院ではHIVの専門的な検査だけでなく、治療も行える感染症専門医が在籍しております。

そのため、薬の幅広い専門知識でのHIV(エイズ)予防薬投与のアドバイスが可能ですので、お悩みの方はご相談ください。

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Q.PEP療法(曝露後予防 )とは?

PEPとは、曝露後予防(Post Exprosure Prophylaxis)の略語です。HIVに感染する可能性のある行為の後、72時間以内にHIVの薬を飲むことでHIVに感染するリスクを低下させる予防策のことです。

このPEPには、「職業従事者PEP」と「非職業従事者PEP」の2種類があります。前者は医療機関などで針刺事故をきっかけに治療を開始することを指し、後者は性交渉などによってHIV感染を予防する目的で薬を飲むことを指します。当院では、後者の相談が圧倒的に多い状況です。ただし、どちらも薬や治療期間全く同じです。

Q.どんな時にPEPが必要ですか?

HIV感染者の体液(精液・膣分泌液・血液など)の曝露があった場合やその可能性が否定できない方が対象になります。相手のHIV感染が不明な場合は、リスク行為によるケースバイケースで開始の判断をした方が良いので、ARADA内科クリニックの感染症専門医にご相談いただければ幸いです。

なお、性行為のリスクは肛門性交(受け手)>肛門性交(挿入側)>膣性交(女性)>膣性交(男性)>oral sexの順に感染リスクがあることが言われております。

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Q.曝露後(感染リスクのある行為から)72時間以上は効果がないですか?

性行為に関連したPEPの予防内服ではこの質問に答える明確な研究データがありません。医療従事者を対象とした研究では、時間経過とともに感染を防げる確率が経時的に低下することが示されたデータがあります。したがって、できるだけ早く内服することが大事と考えられます。

ただし、現時点でHIVに一度感染すると、治癒するための薬は世の中に存在しません。感染を成立させないことが重要だと考えられております。皆様がリスクを感じてこのHPを今ご覧になられていると思います。現在、医療者として推奨できる治療はこれしかありません。

高価な薬ではあり、時間経つとその効果も下がる可能性もありますが、限られた感染予防の望みの策としてご検討いただき、当院では治療開始前に十分に感染症専門医とご相談いただくことが可能です。ご相談ください。

Q.体液が皮膚に付着しただけでPEPを実施する必要はありますか?

本当に正常皮膚のみにしか精液や膣分泌液あるいは血液などが付着したと言えるのであればPEPを開始する必要性は限りなく低いと言えると思います。それは、過去に医療従事者を対象とした研究でHIV-1の曝露後感染成立を確認した研究で、粘膜暴露で0,09%(1/1143人)の感染成立、皮膚接触で0%(0人/2712人)という報告(Ann Intern Med.1990;113(10):740.)があります。

このことからも皮膚接触のみでは感染しないと言えるでしょう。ただし、本当に正常皮膚以外での接触がないのかどうか言い切れない限りは、予防の治療の対象になり得るかと思います。

Q.PEPの治療効果はどれ程なのでしょうか?

米国における職業関連感染に限定した報告になりますが、1名(詳細不明・特殊環境下での感染)を除き、1999年以降PEP治療導入後HIV感染成立した例はないという報告があります。

また、英国でも同様の期間で感染者の報告は一人もないということがわかっています。それまで数百人の感染成立+疑い症例があったことを考えるとその治療のパワーを実感することができるのではないでしょうか。

Q.飲むにあたり、注意が必要な人はいますか?

B型肝炎ウィルスに感染している方は、この薬の使用を中止するとB型肝炎が悪化することがあります。もし元々B型肝炎を患っていらっしゃる方は、KARADA内科クリニックの感染症専門医に是非ご相談ください。

また、気づかないうちにすでにHIV感染があった、という方が検査もせずに内服を初めてしまうと、後の治療に影響が出る可能性があります。PEPを開始する前には必ず「内服する時点ですでにHIV感染がないかどうか」を調べておくことが重要です。

Q.ジェネリックと先発品の違いは何ですか?安全性は問題ないですか?

ジェネリック薬品とは、一般的に新薬と同じ有効成分を含む医薬品のことを指します。新薬は研究開発投資が大きいこと、また発売後に一定期間有効性・安全性を評価するため、それらの費用を加味した価格が設定されています。一方で、ジェネリック薬品はその開発費が100~1000分の一程度に抑えられると言われており、安価で皆様の元に効果を同じくして提供することが可能になっております。

ただし、海外から輸入する事となるPEP/PrEPのジェネリック医薬品は万が一副作用が生じても、国内の健康被害救済制度は適応とならない点だけご理解ください。

Q.PEPとPrEPの違いを教えてください

PrEPはPEPと異なります。PEP( Post– Exposure Prophylaxis「曝露後予防内服」)とPrEP(Pre-Exposure Prophylaxis「曝露前予防内服」)の主な違いは、PEPはHIVに暴露したと考えられる性交渉「後」に服用され、PrEPは性交渉「前」に毎日継続して服用される点です。

Q.どうして採血する必要があるのですか?

  • HIV感染の有無の確認

    治療開始前に既に感染していたという可能性を否定する必要があります。既に感染することに気づかずに、PrEPやPEPを実施すると、薬が効きにくいウイルス(耐性ウイルス)というものを生み出してしまう可能性が高まります。これは社会にとっても、患者さん自身にとっても良いことではありません。PEPやPrEPのような予防ではなく、治療としてHIV治療に向き合う必要があるためにこの予防治療開始前に感染の確認は必須と考えます。

  • 副作用

    稀ではありますが、腎臓機能を確認しておく必要があると考えます。内服をスタートしても問題ないか、内服後の腎臓機能障害が発生してないかどうか、評価するためにも実施しておく必要があると考えます。

Q.薬を飲む時間は1日の中でいつでも良いか?

いいえ。薬はできるだけ決めた時間に飲みましょう。初回に内服した時間にできるだけ翌日以降も合わせて内服してください。薬というのは用法を守ることで期待される効果が発揮されます。

せっかく購入して、予防を講じるのであれば、予防効果を一番期待できる飲み方で使用しましょう。ただし、万が一飲み忘れてしまったとしても、その日のうちであれば速やかに内服していただいて構いません。


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記事執筆者

KARADA内科クリニック 五反田

院長 佐藤 昭裕

KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医。

総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。性感染症(性病検査)も専門とする。
「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。

東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。
-著書『感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル』
●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演中 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

認定資格

  • 医学博士
  • 日本感染症学会専門医・指導医
  • 日本内科学会認定医
  • 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
  • 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
  • 日本エイズ学会認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 臨床研修指導医(厚生労働省)
  • 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)

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