PrEPの最新ガイドライン2025年版:変更点と注目ポイント解説

公開:2025.07.23 医療情報

PrEPの最新ガイドライン2025年版:変更点と注目ポイント解説

-PrEPの2025年版ガイドラインが大きく変わりました


これまでもKARADA内科クリニックは、最新のガイドラインに準拠し、最新の正しい情報をもとに皆様にPrEPを提供してきました。

今年2025年にイギリスのBASHH(英性感染症学会)とBHIVA(英国HIV協会)が発表したPrEP(プレップ)の新しいガイドラインは、これまでの常識を大きく変える内容となっています。


今回は、一般の方にもわかりやすく、3つの観点から変更点を解説します。

PrEPの対象が拡大:「使いたい人が使える時代」に

これまでPrEPは、主に男性同性愛者(MSM)やトランスジェンダーの一部の方など、特定のリスクがある人を対象としていました。
たとえば「過去半年にコンドームなしの性行為が○回以上」など、細かな条件がありました。

しかし2025年版では、「感染リスクを感じ、自分が使いたいと希望する人」が対象となります。
異性愛者や女性、注射薬の使用者、移民の方など、これまで使いにくかった人も含まれます。

この背景には、実際にはリスクが高くても、ガイドラインに当てはまらずにPrEPを受けられなかった人が多かったことがあります。
それくらいPrEPの医学的エビデンスが積み重なり、「HIV予防に大きな役割を果たす」ことが実証された結果と言えるでしょう。今後は「PrEPを必要とする人すべてに公平に届ける」ことが重要になります。

飲み方が選べるように:オンデマンドや注射型も選択肢に

これまでは、PrEPは「毎日1錠を飲み続ける」方法が主流でした。
でも実際には、「週に1〜2回しか性行為がない」「パートナーが不在のときだけ使いたい」など、日常的に服用するのが難しい人も多くいました。

そこで注目されているのが「オンデマンドPrEP(イベントベースPrEP)」です。
これは性行為の前後に集中的に飲む方法で、2025年版では性別に関係なく、誰でも使える選択肢として認められました。

飲み方は「性行為の2〜24時間前に2錠、翌日に1錠、さらに翌日も1錠」という「2+1+1方式」が推奨されています。
女性には以前は推奨されていませんでしたが、今回は「必要に応じて選択肢になりうる」と変更されました。具体的には女性がオンデマンドをする場合には、「性行為の2〜24時間前に2錠、翌日から7日目まで1錠」と明記されました(膣性交の場合)。

また、2か月に1回の筋肉注射で済む「CAB-LA(カボテグラビル)」も正式に選択肢として記載されています。
この注射は飲み忘れがなく、パートナーにも知られずに使用できるなどのメリットがあります。
ただし注射の際は「HIVに感染していないこと」をより正確に確認する必要があるため、採血検査が必須になります。
残念ながら日本ではこの製剤によるPrEPは利用することができません。

モニタリングや副作用チェックも柔軟に

PrEPは安全性の高い薬ですが、腎臓に負担がかかることがあるため、定期的な血液検査(eGFRなど)が必要です。
2025年版では、これらの検査の頻度や方法が柔軟化されました。たとえば、初回のモニタリングを遠隔で行うなど、利便性が上がっています。

また、性感染症(STI)に何度もかかった人にはPrEPが特に推奨されることも明記されました。
これは、HIVとSTIのリスクは重なりやすいことが理由です。

さらに、妊娠中や授乳中でもPrEPを使えることが明示され、特に「HIV陽性のパートナーがいる妊婦」などでは積極的に使用が勧められます。
「使える人を制限する」時代から、「必要な人に届ける」時代へと、大きく方針が変わりました。

まとめ

PrEPは「一部の人の薬」から「誰もが選べる予防法」へ
今回のガイドライン改定では、PrEPがより多くの人にとって使いやすく、安全で効果的な方法として整備されました。
性別やセクシュアリティに関係なく、「自分を守るためにPrEPを使いたい」と思った人が、その意思を尊重される時代がきています。

「自分には関係ない」と思っていた方にも、今後は知っておいてほしい選択肢です。
HIV予防は一人ひとりの選択と社会全体の支援で、もっと前進できます。

参考文献・出典
BASHH/BHIVA. 2025 UK PrEP Guidelines.

Clutterbuck DJ, et al. Driving progress towards PrEP equity: Key changes in the 2025 BASHH/BHIVA UK PrEP guidelines.

記事執筆者

KARADA内科クリニック 五反田

院長 佐藤 昭裕

KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医。

総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。性感染症(性病検査)も専門とする。
「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。

東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。
-著書『感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル』
●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演中 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

認定資格

  • 医学博士
  • 日本感染症学会専門医・指導医
  • 日本内科学会認定医
  • 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
  • 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
  • 日本エイズ学会認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 臨床研修指導医(厚生労働省)
  • 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)

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