- 医学博士
- 日本感染症学会専門医・指導医
- 日本内科学会認定医
- 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
- 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
- 日本エイズ学会認定医
- 日本医師会認定産業医
- 臨床研修指導医(厚生労働省)
- 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
現在国内で大流行中の梅毒ですが、その流行の要因の一つとして、医師の知識不足があげられます。これまで梅毒は皮膚科や泌尿器科で検査・治療が行われることが多かったですが、そういった科の医師でさえも、梅毒についてはあまり詳しくない医師が多いのが実情です。「医師でも結果解釈が難しい梅毒の検査結果」ですから、患者さん自身が理解をしていただくのも、もちろん難しいと思います。ここではなるべくわかりやすいように、簡易的にご説明したいと思います。
梅毒は、コロナのPCR検査と違い、「陽性か陰性か」だけではないことが解釈を難しくさせています。コロナPCRのように病原体そのものの存在を確かめることができず、梅毒に感染したときに体内で起きる反応を検査としてみるしかないのです。
一般的に梅毒は2種類の項目を検査し、その組み合わせで診断を行います。その2種類とは、「STS法(RPR)」と「梅毒トレポネーマ抗原(TP抗原法)」と言われるものです。
それぞれ数種類検査方法があり、医療機関・検査機関によって採用している内容が異なります。STS法はガラス板法、RPRカードテスト、補体結合反応凝集法などがあり、梅毒トレポネーマ抗原は間接赤血球凝集反応 (TPHA)、蛍光抗体法 (FTA-ABS)、ラテックス比濁法(TPLA)などがあります。
KARADA内科クリニックでは、RPRとTP抗体を採用しており、この二つの検査結果で医師が診断を行っております。
簡単に言うと、
です。
TPLAは「傷跡」ですから、やけどの傷が治らず一生残ってしまうように、「梅毒に感染した」という証拠が血液中に残ってしまうのです。ただし、傷跡ですので、周囲に感染させるかという問題についてはRPRも併せてみる必要があります。
表に結果組み合わせとその解釈を載せました。ここに載せているのは、「定性検査」と言われるもので、結果が「+かーか」でかえってくる検査です。まずはこの検査を行い、「+」とでたときに「定量検査」と言われる数値で結果が返ってくる検査を追加します。
本当は梅毒に感染していないのに、検査上陽性となってしまう状態です。膠原病や妊娠などでこのような結果になることがあります。このときは定量検査をすることで、しっかり判別できます。
定性検査の場合、RPRがしっかり下がりきらず、「治療したのに+」となってしまいます。治療後の治癒確認検査は、数字ででる「定量検査」を行うことが重要です。なお梅毒が治ったかどうかは、定量検査で治療前の数値から1/3~1/4程度までしっかり下がったかで判断をします。
例えば、治療前にRPRが90あった人は、治療後に22~30以下に下がったことが確認できれば「治癒」つまり周囲へは感染しない、と判断ができます。0に下がってないからといって追加で治療をする必要はありません。また、1/3~1/4程度まで下がっていなかったとしても、下がるスピードは人によって異なるため、追加ですぐに治療をすることはあまりなく、数か月後に再検査をして経過をみることが多いです。なお、治療効果判定でTPが上がっていたとしても、TPは「傷跡」ですから無視で大丈夫です。
少しでもわかりやすいように書きましたが、それでも判断・理解はなかなか難しいと思います。梅毒の検査・治療は感染症専門医の得意領域です。少しでもお困りのことがありましたら、是非当院までご相談ください。