- 医学博士
- 日本感染症学会専門医・指導医
- 日本内科学会認定医
- 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
- 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
- 日本エイズ学会認定医
- 日本医師会認定産業医
- 臨床研修指導医(厚生労働省)
- 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
性感染症の症状に関して、感染症専門医が解説いたします。
こんにちは。KARADA内科クリニック渋谷の院長の田中です。
渋谷にてクリニックを開院し、様々な感染症・内科の問題を抱えた患者さんに来院していただき、健康の相談を承っております。
その中で、五反田で勤務している時と比べて、大きな違いを感じていることがあります。性感染症(性病)の診療において、受診される患者さんの年齢層が比較的若いことです。そのため、初めて性感染症(性病)を患ったと話される方も多いです。
検査・診断・治療・予防、さらにはパートナーにはどのように伝えるのかなど、個人個人の事情を鑑みて、こちらも専門家としてアドバイスできればと思い、日々診療しております。
さて、今日は性感染症(性病)の中でも代表的な病気、尿道炎について説明したいと思います。日本で確認される性感染症(性病)の7割程度がクラミジアと淋菌です。まさに性感染症(性病)の二大巨塔と言えるかと思います。
逆に、まずこの二つの感染症の適切な診断・治療は極めて重要と言えるでしょう。
では、その二つの病原菌による尿道炎の違いについて解説していきたいと思います。
淋菌 | クラミジア | |
潜伏期間 | 3~7日間 | 1~3週間 |
発症様式 | 急激 | 緩やか |
症状 | 排尿時の痛みが強い | 違和感・かゆみ |
尿道からの分泌物の性状 | 膿性(白い・黄色い)・ドロッとした | 無色透明・サラサラ・ヌメっとした |
量 | 多い | なし~少量 |
日本性感染症学会の性感染症 診断・治療 ガイドライン2016より抜粋
表で示した通り、淋菌は症状が強めで、クラミジアは控えめな印象を受けるかもしれません。ただし、性感染症においていつも難しさを感じるのが、典型的ではないことがとても多いということです。
症状の感じ方が人それぞれですし、風邪による喉の痛みなどと異なり普段より経験してきた症状ではないために、表現が難しいように皆さんが感じていると私は思います。
そのため、多量の白い・黄色い膿が尿道から出ていても、「少しだけ匂う」とか「おしっこが汚れている」などと表現される方もいらっしゃいます。そのため、実際の診察で確認させていただくこともあります。
さらに、注意が必要なのは、共感染、つまり、淋菌もクラミジアも両方ともに尿道に付着し、淋菌性尿道炎とクラミジア性尿道炎を同時に患っている方もいらっしゃいます。
20年も前の研究にはなっておりますが、本邦では尿道炎の中の10%程度は共感染だったとのことです。(日泌尿会誌2002;93:450-456)これでは、本当に症状のみでは診断しきることは難しく、最終的には検査の重要性が高まるのではないかと思っております。
皆さんが日本におけるよくある性感染症による尿道炎の特徴を把握することで、自分も性感染症なのかどうか?の認識を少しでも早く持てるものかと思い紹介させていただきます。
この特徴は、20年ほど前の日本の男性尿道炎を調査してまとめたものですが、実際に東京の五反田と渋谷のKARADA内科クリニックで診療している私達からすると、特に大きな違いはないのではないかと思っております。
男性の尿道炎に罹患する人の70%が性風俗店を利用しています。実際に、風俗店と言えど、様々な業務形態があると思います。性感染症の感染経路をおさらいすると、粘膜と粘膜が接触すれば感染は成立します。
実際には、診療の経験からすると、Oral Sex(フェラチオ)からの感染が多いように思います。実際の報告でも、82.6%がOral Sex(フェラチオ)からの感染という結果でした。加えて、咽頭からの感染することを認識している方も半数程度であり、その上で、98.9%がコンドームを装着していないという実態が明らかになっております。(日泌尿会誌2002;93:450-456)
感染経路 | 男性 | 風俗側 |
性行為関連感染 | 陰茎 | 膣 |
経直腸感染 | 陰茎 | 肛門 |
経口感染 | 口 | 口/肛門 |
以上より、特徴を考慮して男性尿道炎にならないための私達からできるアドバイスは、
男性尿道炎の罹患を防ぐには、基本的なことかもしれませんが、その機会をなくす、あるいは、コンドームの装着というところが予防にはなると思います。
尿道炎を検査する場合、KARADA内科クリニックでは、尿の検査を行っております。女性で尿道炎あるいは膣炎の場合も同様に尿検査あるいは自身で膣を綿棒で拭っていただく検査を行います。
採取いただいた検体を利用して、PCRの検査を行います。自費で検査する場合を除いて、3日後*に結果をお伝えすることができます。
*即日検査結果が分かる場合もございます。自費での検査限定ですが、7,700円(税込み)/各検査毎の値段はかかりますが、当日30分程度で結果をお伝えすることが可能です
PCR検査というと、新型コロナウィルスを想起される方も多いと思いますが、実際には他の微生物の検査の方法にもしばしば使われる検査方法なのです。
尿道炎の診断がつき、原因の菌がわかれば、それぞれに対応して治療が必要です。ただし、ともに感染していることもあるために、両方治療する場合も当然あります。治療は表にまとめてある通りに、当院ではまず実施しております。
尿道炎の治療をする場合に診察室でアドバイスしている点は主に二つあります。
尿道炎の検査として用いられたPCRの検査を用いて、同様に治療効果を判定しております。
PCRはとても精度の高い検査方法です。少しでも菌が残っていると検査は陽性として結果が返ってくることがあります。
治療効果が不十分あるいは抗菌薬耐性菌が理由で陽性になり再度治療が必要なものなのか。
あるいは、ただ単に治療効果判定をするには時期尚早であったのかわかりません。当院では、1ヶ月後の治療効果判定をまずオススメしております。
少なくとも保険診療では同月に淋菌やクラミジアに対するPCR検査を2回行うことが認められていないために実施できません。
どうしても早期の検査で治療効果を判定したい場合には、自費での検査も可能であることを紹介しておきます。
もちろん治療効果判定が済むまでは、他者との性交渉は控えましょう。再感染のリスクが高まってしまいます。
淋菌 | クラミジア | |
治療 | 注射+内服 | 内服のみ |
内容 | 薬服用+点滴 | 薬服用 |
期間 | ともに1日で終了
内服:数秒 点滴:30分程度 |
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治療効果判定の必要性 | 必ず必要
1~2週間程度では陽性になることも 性交渉を控えて、十分な感覚をあけての再検査を |
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治療効果判定のタイミング | 可能なら3-4週間後の再検査推奨 | |
パートナーへの通達 | 必要 |
当然、性交渉の経験のあるパートナーがいれば、検査をすることをオススメしております。患者さん本人の治療が奏功したとしても、もしパートナーがこの淋菌やクラミジアを保菌しているとすれば、再度感染の可能性が発生してしまいます。
実は、この淋菌やクラミジアは無症状で体に保菌されていることもあります。経験的に、性器の症状は慣れによって患者さん本人が前からこんなもんだったと認識し、病院受診されず保菌していると思うことがしばしばあります。
したがって、パートナーが検査し、性感染症に感染していないことを確認するまでは性交渉を控える必要があると言えます。
伝え方に関しては、これは本当にそれぞれ様々な事情を抱えていることがあります。現状では、個別の事情を丁寧に聴取させていただき、パートナーとともに患者さんが前を向いて生活しているように、医師として相談に乗らせていただきます。
性感染症の罹患の伝え方のコミュニケーションとしてどのような形や言い回しが理想的なものなのか、これは私自身の今後の研究の課題だなと思っております。ともに考えてまいりましょう。