淋菌(Nisseria gonorrhoeae)という細菌が引き起こす性感染症(性病)です。
感染確率が非常に高く(20-30%)、何回でも感染します。様々な症状を引き起こしますが、自覚症状がなかったり、症状が自然消失することもあり注意が必要です。
感染確率が非常に高く(20-30%)、何回でも感染します。様々な症状を引き起こしますが、自覚症状がなかったり、症状が自然消失することもあり注意が必要です。
また、人により症状はだいぶ異なります。症状だけでは淋菌とクラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマなどの症状は完全には区別出来ないので、検査によって見分けます。
男性・女性に共通する症状としては、以下のようなものがあります。
男性:男性:尿、うがい液 (感染の機会からすぐに受けられます)
女性:膣ぬぐい液、うがい液 (感染の機会からすぐに受けられます)
淋菌感染症は性行為を通じて感染する性病(性行為関連感染症)です。 性行為の相手からうつりますが、「性行為の内容」によってどこに感染してしまうか、が変わってきます。もう少し細かく言うと、「相手の感染している部位に、自分のどこかの粘膜が接触すれば、そこに感染する可能性がある」となります。 例えば、相手ののどに淋菌がいた場合、「ディープキスをすれば自分ののどに」、「相手が自分の性器を舐めた場合は自分の性器に」感染します。相手の膣に淋菌がいた場合、「コンドームを使用しない膣性交をしたら自分の陰茎に」、「クンニリングスをしたら自分ののどに」感染する、ということです。 他の経路としては、相手の精液が目に飛んで目に感染したり、相手の精液を触った手で目や性器を触ることで感染することもあります。
大きく分けて、①PCR検査、②イムノクロマト法、③培養検査があります。
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男性 | 女性 | ||||
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① PCR法 (通常検査) | 尿 うがい液 のどぬぐい(綿棒) 肛門ぬぐい(綿棒) | 膣ぬぐい(綿棒) うがい液 のどぬぐい(綿棒) 肛門ぬぐい | 3日 | 精度が高い | 結果が出るまで数日かかる |
② イムノクロマト法 (迅速検査) | 尿 うがい液 のどぬぐい(綿棒) 肛門ぬぐい(綿棒) | 膣ぬぐい(綿棒) うがい液 のどぬぐい(綿棒) 肛門ぬぐい(綿棒) | 15~40分 | 精度がやや低い | 結果が当日にわかる |
③培養検査 | 尿 うがい液 のどぬぐい(綿棒) 肛門ぬぐい(綿棒) | 膣ぬぐい(綿棒) うがい液 のどぬぐい(綿棒) 肛門ぬぐい | 約1週間 | どの抗菌薬が効くかわかる | 低温で死滅してしまう |
当院では主にPCR検査とイムノクロマト法を行っています。 培養検査は、なかなか治療が上手くいかない時、適切な抗生物質を投与しているにもかかわらず、治らない時などに追加で検査を行います。培養検査は「感受性試験」といって、その菌に対してどの抗生物質が効果があるかを調べることが出来るためです。ただ、温度管理が必要だったり、菌を検出する感度がPCR検査に比べて低いため、最初からは行っていません。 PCR検査とイムノクロマト法は、両検査とも「症状がでている箇所」もしくは「調べたい箇所」を綿棒でぬぐったり、尿を出していただいて検査を行います。 ※当院では女性の膣ぬぐいや肛門ぬぐいはご自身で採取していただきます。看護師より採取方法を説明いたしますのでご安心ください。
症状がでてしまったときには、その時に検査を受ければ正確な結果が出る可能性が高いです。 症状がない場合でも、感染リスクのある行為後すぐに検査を受けることが出来ます。その時の検査が陰性であっても、できたら1か月後に再検査を行うことをお勧めいたします。
淋菌は実に多くの部位に感染を起こします。(図1)
図1 淋菌感染部位
抗生物質の点滴もしくは筋肉注射による治療を行います。 セフェム系(セフトリアキソン)1回点滴、もしくはアミノグリコシド系(スペクチノマイシン)1回筋肉注射で治療は終了しますが、抗生物質が効きにくい菌(耐性菌)であってもしっかり治療できるように、またクラミジアとの混合感染もあるため、マクロライド系(アジスロマイシン)の内服を併用することもあります。 また感染が広がって腹痛なども伴う場合には点滴を1週間続けることもあります。 以前使用されていたニューキノロン系抗菌薬(レボフロキサシンやシプロキサシン)は淋菌に対して耐性化(効かなくなること)がすすんでおり、当院では使用いたしません。
抗生物質が効けば、1週間かけて徐々に症状が改善します。「投与して翌日にスッキリ症状がなくなる」ことはほぼありません。 治ったかどうかの治療効果判定を抗生物質内服後から4週間後に受けるようにしてください。抗生物質が効いたようにみせかけて、実際は治っておらず、体内に潜伏していることもあります。それだと性行為によりまた相手に感染させてしまいます。それを防ぐためにも、4週間後の再検査が重要となります。 治療してから1,2週間後に再検査を受けてしまうと、「菌の死がい」に反応して検査が陽性になってしまうことがあります(偽陽性)。PCR検査は鋭敏な検査ですので、このようなことが起こります。本当は治っているにもかかわらず、再度「陽性」、つまり「治っていない」と判断され、別の抗生物質を投与されてしまうことになります。この死がいもいなくなる時期の4週間あけてからの検査をお勧めいたします。 治療後1週間しても症状が残る場合や、全く症状が変わりない場合は、抗生物質が効いていない可能性があります。抗生物質を変更し再治療する必要があります。多くの方は1種類目の抗生物質で治りますが、約1~2%の方が治らず2種類目の抗生物質へ変更することがあります。
「淋病」とは、淋菌という細菌が引き起こす病気のことです。淋菌の正式名称は、Nisseria gonorrhoeae (ナイセリア ゴノレア)といいます。細菌を染色し、顕微鏡で見る方法で「ゲラム染色」というものがありますが、これでグラム陰性球菌という分類になります。丸い紫の球形が連なってるように見えます 図2は細菌を染色して顕微鏡でみた Nisseria gonorrhoeae の写真です。
図2 Nisseria gonorrhoeae の電子顕微鏡写真 引用元:Neisseria gonorrhoeae: Disease, Pathogenesis and Laboratory Diagnosis – Learn Microbiology Online
1回の性行為で感染する確率が30%あり、これは性感染症の中でもかなり高い数値です。また、1回感染しても、免疫を獲得できないため、何回でも感染します。 そして、淋菌感染症があると、HIV感染のしやすさが約2~5倍あがることも知られており、しっかり検査をしておくことが重要となります。 図3にある通り、徐々に数は減っていますが、ここ数年は横ばいの状態が続いています。
図3 性感染症の年別報告数 参考:感染症発生動向調査より
この図にある数ですが、決して日本国内の全患者数を反映しているわけではありません。淋菌感染症は「定点報告」といって、全医療機関(18万件)が診断をつけたときに保健所へ届け出る必要はなく、指定された医療機関(約800~1000件)のみ届けることになっていますので、実際の感染者数は桁違いに多いと予測されます。 図4は男女別の報告数です。男性に多い感染症です。クラミジアに比べて男性でも症状がでやすいため、判明する数が多いと考えられます。
図4 男女別の淋病報告数
図5は年齢層別ですが、最も多いのが20台前半ですが、15~19歳の若年層でも増えてきています。性行動が活発であればあるほど、感染リスクは上がります。
図5 年代別の淋病報告数(2019年)